ディアモロッコのものづくり


私がモロッコのバブーシュに出会ったのは、今から15年ほど前のことでした。もともと、モロッコのラグ&カーペットを扱うオンラインショップを始めようと思い、雑貨やラグを買い付けては日本のお客様にご紹介していたのですが、複数のお客様から「バブーシュを扱ってほしい」というリクエストをいただいたことがきっかけで、バブーシュと出会いました。
さて、スークで買ってきたバブーシュを販売し始めたのですが、色々と問題が生じました。


当時のスークには、染料をそのまま使った様な、激しい色合いのバブーシュしかありませんでした。
真っ赤、真っ青、ピンク、オレンジ、黄色など。原色の革色に、原色の刺繍などがほどこされたものばかり。
原色も可愛いのですがそればかりでは飽きそうです。
また、激しく色落ちするものも一般的でした。

サイズ
ハンドメイドの履物をまとめて購入する際はヨーロッパサイズ37〜42までを各1足、合計6足を購入しなければならないという慣習がありました。 最初は良いかもしれませんが、当然、よく注文されるサイズと、売れ残るサイズがありますよね?

におい
マラケシュは乾燥しているので、気にならなかったのですが、湿度の高い日本に送ると途端にきついにおいが。
当時問題だったのは、革特有のにおいというよりは、質の悪い革や糊を使うことから生じる問題でした。

縫製
適当な作りのものが多く、中には一日履いただけで壊れてしまうものも。
できるだけ良いものを選ぼうと、お店の中二階の倉庫スペースを漁ってみれば、カビの生えたものが山積み・・・
バブーシュは、モロッコの伝統的な履き物ですが、モロッコ人が昔から履いているのは、牛革などの硬い革で作られた、先が尖ったタイプ。 先が丸いタイプは主にお土産として作られていたため、原価が安ければ安いほどいい、店頭でそれっぽく見えればいいという粗悪な商品が出回っていました。

今でも、スークで売られている商品の中には、売れればいい、売った後のことは考えていない商品が結構あります。
これは、売り手の考え方も問題ですが、観光客が値切るので、最低限の原価で生産する必要があるという理由もあります。
良いものを使って、腕の良い職人さんが作ったものは、日本に比べると物価の安いモロッコで作られたものであっても、それなりの値段はします。
モロッコで購入される方は、薄暗いスークでは全ての商品が魅力的に見えますが、よく確認してから購入してくださいね。

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モロッコ雑貨の価格



ちょっと脱線して、マラケシュのスークで購入した場合の「モロッコ雑貨の適正価格」についての参考に。
モロッコの物価、どのくらいだと思いますか?
アフリカだから激安 アジアの観光地と同じくらい と思われている方が多いのですが、先日発表されたトリップアドバイザーの各観光地の平均宿泊施設価格によると、マラケシュの平均宿泊地価格はチェコのプラハとほぼ同じなのだそうです。(約1万円)
トリップアドバイザーに登録された全宿泊施設の平均が1万円というのは、モロッコのイメージからすると高めに感じられませんか?
人件費はタイやインドネシアの2〜3倍。
ギリシャやスペインの半分程度。
法的に価格が定められている一部の食品や農作物はかなり安いですが、モロッコで作られていない素材や物は、日本よりも高いことも多く、それほど物価が安いという感じではありません。

ですが、モロッコ=安いというイメージがあるため、スークのお土産物や安くないと売れない場合が多く、そのため、削れるところは削って作る、という現実的な解決策が取られ、すぐに壊れる品質の物が溢れることになります。

また、当然のことながら、革のランクも最低、職人さんも、職人とは言えないようなレベルの人が何の保証もなく働くことになります。また、工場生産品やインドや中国からの輸入ものをモロッコ製ハンドメイドを偽って販売していることも。

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バブーシュは、天然の素材である「革」を使って、たくさんの人の手を経て完成します。

短時間に大量に作り大量に消費され、すぐに廃棄されるファストファッションとは対極にある物です。

それを考えると、できるだけ長くお使いいただける良いクオリティの物を作りたい、パッと可愛いなと思われてすぐに飽きられる物ではなく、インテリアの脇役として、長く大切にされる物を作りたいと思います。
 

ディアモロッコのバブーシュ



厳選した革を使用。
バブーシュには羊の革が使われますが、「羊の革」といってもピンからキリまで様々なクオリティがあります。
羊の産地によって厚みが違います。
また、モロッコの革はなめしも手仕事ですから、なめし方により仕上がりが全く異なります。
ディアモロッコでは、長い付き合いのある業者さんからバブーシュ用としては最高級のクオリティの革を仕入れていますが、革の厚み、色、クオリティにより様々な部位に使い分けています。

また、革の状態であまり長く置いておくと質が低下するため、週に一度程度仕入れ、常に最も良い状態の革を使用する様にしています。 そのほかの素材も、スパンコールの一部は国外から、生地はヨーロッパや日本から仕入れるなどして、質の良い物を使用しています。

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手工業が盛んな町、マラケシュには数多くの職人さんが居ます。
ハンドメイドの職人さんには特に資格も試験もありませんから、腕が非常に良い人もいれば、職人さんと名乗っているだけ、という人も居ます。
ですから、良い職人さんを集めることが良い物作りには欠かせません。
ディアモロッコの工房の職人さんは、うちで長く働いてきた人ばかりで、欠員が出た際も、紹介で良い人に入ってもらっています。
新商品開発時などは、「これはここをこうしたほうがいい」「デザインはいいけれど、履き心地が犠牲になる」などの意見も出ます。

一人一人がものづくりにプライドを持っているなあ、と話をするたびに思います。

非常に重要な工程として、検品があります。 靴の形に革を伸ばすために木型をいれて激しく打ち付けるという工程があり、その工程で色が剥げたり、スパンコールが飛んだりすることがあります。
ディアモロッコでは、一次検品をベテランのモロッコ人女性スタッフが行い、二次検品をさらにベテランのモロッコ人と日本人が行います。
「ディアモロッコのバブーシュは可愛いけれど、もっと安いバブーシュもたくさん見かけるし、現地では安い。ちょっと高いんじゃない?」 と言われることがありますが、日本で売られているバブーシュには、スークのお土産ものを買い付けたものから、色やデザインをメールで発注して送ってもらっているもの、ディアモロッコのように現地に日本人を置き、自社生産しているものなど千差万別です。

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細かいところにどれだけ気を使うか、で同じ「バブーシュ」を作っても全く異なる仕上がりのものが出来上がります。

料理にたとえてみると簡単です。 簡単な料理の代表格であるオムレツ。
誰が作っても「オムレツ」ですが、どんなフライパンを使うか、誰が作るか、どの卵、バター、油を使うか?だけでもずいぶん違いますよね。

その上、具を入れるとすると、何をどのくらいのバランスで入れるか、具にどのくらいこだわるか。お皿はどうするか、テーブルのセットはどうするか?

作る過程はお客様には見えません。 特にオンラインショップの場合は、出来上がりの商品は、写真が上手に撮れればどれも同じように見えます。 でも、私たちは見えないところも贅沢に、丁寧に時間をしっかりかけてできるだけ良いクオリティのバブーシュをお届けしたいと思っています。

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